派遣法改正による情報公開の義務化と現行制度化での情報公開

派遣法改正による情報公開の義務化

 2012年4月6日に公布された派遣法改正法は、派遣料金と派遣労働者の賃金の差額の派遣料金に占める割合(いわゆるマージン率)などの情報公開を義務化することにしています。具体的には、派遣法改正法第23条に、下記の一項が加わることになります。

第23条

5 派遣元事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、労働者派遣事業を行う事業所ごとの当該事業に係る派遣労働者の役務の提供を受けた物の数、労働者派遣に関する料金の額の平均額から派遣労働者の賃金の額の平均額を控除した額を当該労働者派遣に関する料金の額の平均額で除して得た割合として厚生労働省令で定めるところにより算定した割合、教育訓練に関する事項その他当該労働者派遣事業の業務に関しあらかじめ関係者に対して知らせることが適当であるものとして厚生労働省令で定める事項に関し情報の提供を行わなければならない。

そのため、派遣会社は、施行予定の10月上旬までに、ホームページ等で公開する準備を進めていかなければなりません。

 

現行では、情報の公開について、どう取り扱っているの?

 現行法では、派遣法の条文にその定めはなく、「日雇派遣指針」と「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」で、情報公開に関する事項について定められています。具体的には、以下の通りです。

日雇派遣指針 第10【情報の公開】

 派遣元事業主は、労働者派遣の実績、派遣料金、派遣労働者の賃金、教育訓練等の事業運営の状況に関する情報の公開を行わなければなりません。

派遣元が講ずべき措置に関する指針

13 情報の公開

 派遣元事業主は、派遣労働者及び派遣先が良質な派遣元事業主を適切に選択できるよう、労働者派遣の実績、派遣料金の額、派遣労働者の賃金の額、教育訓練その他事業運営の状況に関する情報を公開すること。

 情報の公開は、@ホームページに掲載する、A説明用の文書を用意する等の方法で行うものとされており、平成20年4月1日から適用されています。

 

現状の派遣会社の対応は?

 派遣会社の対応は、まちまちですが、困ったことに、「情報公開していない」、つまり前述の@もAも行っていないというか公表していないところが一番多いのです。

 逆に最も少ないのが、「@ホームページに掲載する」です。いろいろな派遣会社のホームページを見てみても、情報公開に該当するページがないのです。公開すべき内容は、事業報告書に記載しているものと同様のものでよいとされており、公開する内容例まで示されています。

 派遣元が講ずべき措置に関する指針が改定された際に、情報公開を行う趣旨が次のように、示されています。

※派遣元事業主は、派遣労働者及び派遣先が良質な派遣元事業主を適切に選択できるよう、労働者派遣の実績、派遣料金の額、派遣労働者の賃金の額、教育訓練その他事業運営の状況に関する情報を公開すること。

 つまり、情報を公開することで、派遣労働者や派遣先企業が、優良な派遣会社を選ぶ基準とさせようとしたのです。しかし、残念ながら、期待した効果は得られなかったようです。

 情報公開を行っていることを告知している派遣会社の多くがとっている方法は、「A説明用の文書を用意する等の方法」です。ホームページに「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針に基づく情報公開についてのご案内」という項目を設け、電話またはメールで、問い合わせさせ、メールまたは郵送で、公開すべき内容を公開すると言うやり方です。

 ところで、派遣会社は、教育研修等の派遣スタッフ支援に関する取組みをどのように自己評価しているのでしょうか。

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 この表は、「労働者派遣事業における派遣スタッフの雇用管理改善にむけて」から引用したものです。

 派遣会社を対象に調査し、派遣スタッフ支援に関する取組みを自己調査したものですが、「継続就業」、「賃金水準向上」、「福利厚生の充実」については、回答した派遣会社の大半が「できている」としていますが、「スキル向上」、「正社員転換」については、「できている」とする派遣会社は5割前後と相対的に少なくなっています。

 では、下の図をご覧下さい。

 

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 上の図では、派遣スタッフのスキル向上支援ができているとする派遣会社の方が、そうでない派遣会社に比べて、派遣スタッフの就業意欲が業界標準よりも優れていると回答する割合が高くなっていることがわかります。このような調査結果を踏まえて、派遣会社が教育訓練をどのように行っているかを公表することで、派遣労働者が優良な派遣会社を選ぶ基準にしてもらおうと考えているのです。

 情報の公開により、派遣会社が教育訓練に力を入れることで、派遣労働者のスキルが向上し、安定した派遣就業に加え、正社員への転換が推進されることを期待しているのです。

 

派遣法改正法が施行されるとどうなる?

 派遣法改正法では、指針で定められていたものを法律として定め、派遣会社に情報の公開を義務化しています。指針でも派遣労働者や派遣先が良質な派遣会社を適切に選択できるようにするためとされていましたが、今回の改正法でも、優良な派遣会社をしっかり育成していくために、情報公開を行うとしています。

 現行法でも、派遣労働者の教育訓練の機会を確保するという規定があります。

 

【派遣法第30条】(派遣労働者の福祉の増進)

 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする労働者について、各人の希望及び能力に応じた就業の機会及び教育訓練の機会の確保、労働条件の向上その他雇用の安定を図るために必要な措置を講ずることにより、これらの者の福祉の増進を図るように努めなければならない。

 とはいいながら、派遣労働者の方が、正規の労働者よりは、安定しない状況であるため、きちんと教育研修等を行い派遣労働者の就業機会の確保を図っている優良な派遣会社については、きちんとわかる形にすることが必要であることから、情報の開示を義務化したのです。

 情報を開示する以上、どのような形式であれ、教育研修を実際に行わなければなりません。中小派遣会社の場合、大手派遣会社ほどコストをかけて研修制度を整えることは難しいと思います。ただ、工夫次第では、派遣労働者に受け入れられる研修制度を作ることは可能です。何もやらないことが一番悪いことで、そのような派遣会社をなくすことも、この法律の役割なのです。

 

では、どのような情報公開を行えばよいのでしょうか?